温泉の中には非常に多くの成分が含まれていて、まったく同じ化学組成はないとまで言われています。
昭和54年(1979)に改定された温泉法で、新しく9種類に分類されイオン表示となったのですが、普及があまり進まず、温泉地の温泉分析書では旧泉質名表示による11種類の分類をもとに表示しているところと新しい分類に泉質名を表記しているところとが混在しているのが現状のようです。
ここでは温水内のイオン成分による分類の特徴を見ていきたいと思います。()内は新泉質名を表しています。
●イオン組成による分類名 <溶存物質総量1,000mg/kg以上>
1、食塩泉(ナトリウム?塩化物泉)・・・主要成分にナトリウムイオンと塩素イオンを含み、食塩として5g/kg以下を弱食塩泉、15g/kg以上を強食塩泉と呼びます。別名「熱の湯」と言われ、塩分により汗の蒸発を防ぐため保温性に優れています。舐めると塩分により塩辛い味です。
2、重炭酸土類泉(カルシウム(?マグネシウム)?炭酸水素塩泉)・・・主要成分にカルシウムイオン(またはマグネシウムイオン)とHCO3-イオンを含みます。鎮静作用があり炎症を抑える効果があり、アトピー性皮膚炎や皮膚病に良いとされています。
3、重曹泉(ナトリウム?炭酸水素塩泉)・・・主要成分にナトリウムイオンとヒドロ炭酸イオンを含みます。美肌作用が高く別名「美人の湯」「美肌作りの湯」と呼ばれ、皮膚病ややけど、切り傷などに効果があると言われています。また飲用すると胃酸を中和し、胃の活動を促進させる作用があります。
4、芒硝泉(ナトリウム?硫酸塩泉)・・・主要成分にナトリウムイオンと硫酸イオンを含みます。別名「傷の湯」と呼ばれ、高血圧や動脈硬化症などに効くと言われています。
5、石膏泉(カルシウム?硫酸塩泉)・・・主要成分にカルシウムイオンと硫酸イオンを含みます。カルシウムの作用により鎮静効果があり、神経痛やリウマチ、高血圧、痛風などに効果があると言われています。
6、正苦味泉(マグネシウム?硫酸塩泉)・・・主要成分にマグネシウムイオンと硫酸イオンを含み、またpHが9以上では、塩素イオンが硫酸イオンより少し多い場合硫酸塩泉と呼ばれます。別名「脳卒中の湯」と呼ばれていますが、日本には数が少ない温泉です。高血圧や動脈硬化に効果があると言われています。
ここでは泉質について、イオン成分による分類以外で分類される泉質の特徴について少し触れて見たいと思います。()内は新泉質名を表します。
●特殊成分による泉質名 <溶存物質総量1,000mg/kg未満>
1、単純炭酸泉(二酸化炭素泉)・・・遊離二酸化炭素を1,000mg/kg以上含みます。日本では「泡の湯」と呼ばれ、またヨーロッパでは「心臓の湯」と呼ばれることもあるそうです。炭酸ガスにより血行が良くなり心臓への負担を軽減すると言われ、心臓病や高血圧症などに効果があるとされています。
2、鉄泉
炭酸鉄泉(鉄?炭酸水素塩泉)・・・主要成分に鉄イオン20mg以上と炭酸水素イオンを含みます。
緑礬泉(鉄?硫酸塩泉)・・・主要成分に鉄イオン20mg以上と硫酸イオンを含みます
鉄泉は、炭酸水素イオンを主要成分に含む炭酸鉄泉と、硫酸イオンを主要成分に含む緑礬泉に分けられます。両者とも鉄イオンを含むため、酸素に触れると酸化し、茶褐色の沈殿物が発生します。更年期障害や月経障害に効果があると言われています。
3、硫黄泉・硫化水素泉(硫黄泉)・・・硫黄を2mg/kg以上含みます。硫黄は卵が腐ったような独特の匂いを発しますが別名「万病の湯」と呼ばれ様々な効能があると言われています。動脈硬化症、喘息、リウマチ、神経痛などに効果があるそうです。
4、明礬泉(アルミニウム?硫酸塩泉)・・・主要成分にアルミニウムイオン100mg以上と硫酸イオンを含みます。別名「目の湯」と呼ばれ、皮膚や粘膜を引き締め、皮膚疾患や結膜炎など粘膜の炎症に効果があると言われています。
5、放射能泉(放射能泉)・・・一般に日本の放射能の主体はラドン(もしくはトロン)の為、ラドン温泉と呼ばれることがあります。ラドンを100億分の30キューリー以上含む場合か、ラジウム塩を1x10-7mg/kg以上含む場合に放射能泉と呼びます。ラドンは温度が低いほど溶けやすい性質を持っているので、25度以下の冷鉱泉に多くみられ、尿酸の排出を促すため別名「痛風の湯」とも呼ばれます。効能は神経痛や自律神経の過敏状態を抑え、飲用すると痛風のほか糖尿病にも良いとされています。
ここで挙げた効用、効果はあくまで一般的な例ですので実際に温泉に入浴する際には、各温泉の分析表をご確認ください。
ここでは液性による分類と療養泉と呼ばれる温泉について見ていきたいと思います。
?単純温泉・・・日本でもっとも多い温泉です。条件は成分的にはイオン組成による分類、特殊成分での分類に該当しないもので、泉温が25度以上、水1Kg中に100mg未満の成分及び遊離炭酸の含有量となります。基本的には無色透明で、無味無臭のものが多く、刺激が少ないのが特徴です。効果は広く万人向きと言われます。具体的な効能は神経痛、リューマチ性疾患、骨折や外傷の療養、また、脳卒中や外傷、手術後の回復、ストレス病などが挙げられます。飲用すると、軽い胃炎にも効果があると言われています。単純温泉でも、phが8.5以上の温泉はアルカリ性単純温泉と呼びます。
?酸性泉・・・水素イオンを水1Kgあたり1mg以上含む温泉をいいます。一般的に無色で透明もしくはやや黄褐色がかったものが多く、温度は高めで酸味があり、地域は噴火口付近に湧出することが多いです。酸性泉の中でも、硫化水素を含んでいる温泉を酸性硫化水素泉、明礬を含んでいる温泉を酸性明礬泉、緑礬を含んでいる温泉を酸性緑礬泉と呼びます。酸が作用して強い殺菌力があり、肌の弱い人や高齢者などではただれることもあります。効能は水虫や湿疹、皮膚病などに効くと言われています。
?療養泉
療養泉という言葉を聞いた事があるでしょうか。療養泉とは、鉱泉分析法指針に「鉱泉のうち、特に治療の目的に供しうるもの」と規定され、成分も規定されているのですが、実はこの鉱泉分析法指針と温泉法で規定している成分とは若干違いがあり含有量の規定にも違いがあります。この違いにより温泉法では温泉として認められているのに、療養泉として名称をつけられない温泉が出てきます。
その条件は以下のようになります。
・泉温が25℃未満
・溶存物質が1000mg/kg未満
・温泉法の条件はクリアーしているが、療養泉の条件を満たせない
このような温泉の分析書では泉質欄には泉質としてではなく、「温泉法の温泉」として表示されます。また、泉質別適応症は空欄となり何も記載されないので、温泉としての効能は「一般的適応症」となります。
鉱泉分析法指針は、法律ではなく、1957年に制定された行政指針なのですが、実際には温泉法以上に細かい定義や分類がなされていて、phでの分類や浸透圧の分類なども書かれています。
しかしながら、療養泉だから良い、悪いではなく、利用者にあった泉質を選ぶことが大切な事ではないでしょうか。
あたたかい湯船で足を伸ばす。これだけでも、ストレス解消や血行促進などに十分に効果があるのですから。
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